ボクらの100年構想 vol.1 山本美典さん
この街のサポーターと一緒に
100年先もここに店を開いていたい。
鶴橋らーめん食堂 鶴心 あびこ店 親方こと山本美典さん
18歳、大阪へ。
セレッソ大阪のホームゲームで、真っ先に行列のできるフードコートがある。「鶴橋らーめん食堂 鶴心 あびこ店」。その店のからあげはスタジアムグルメのベスト3にも選ばれた。本店はスタジアムがある長居駅からひと駅先の我孫子駅。3番出口をでてスグの場所に「鶴心」の看板がでている。店内にはセレッソのマフラーや選手の色紙が飾ってあり、週に2回以上通う常連のサポーターも数え切れない。ところが、初めからこんなにセレッソを応援する店ではなかったという。
親方の山本さんが我孫子に店を開いたのは今から4年ほど前のこと。そもそも大阪の街にでてきたのは、それよりもずっと昔。23年も前のことだった。
「自分で商売をやってみたくて、何ひとつ持たずに大阪に来たのが18歳のときでした。出身は名古屋なので中日ドラゴンズも好きでしたねえ。」
大阪の飲食店で修業を始めた山本さんは、そこでまず「長居」と出会う。就職したばかりの頃、当時は「ドーハの悲劇」があり「Jリーグ元年」翌年にはセレッソもJFLを優勝してJリーグに参戦した。勤めていた会社が長居公園のなかに売店とレストランを経営していたため、山本さんも何度も長居に足を運び運営に汗を流していた。
「一番思い出すのが、参入一年目の第2節、最初のホームゲームです。確か相手はグランパスだったと思うのですが、会社も私も初めてのことで、どれだけの商品や食べ物を仕込めばいいのか全くわかりませんでした。一体これから長居で何が起こるんだろうと、みんな訳がわからないなかでものすごく緊張していましたね。キックオフから試合終了まであっというまでほぼ記憶がありませんから。」
そして社員として働き続けるうちに転機が訪れる。会社が難波にラーメン店を出し、担当していた山本さんにのれんわけの話が持ち上がり、物件を探していたところ、偶然にも長居に近い我孫子の駅前にテナントが見つかった。
村田選手との出会い。
2011年のある日。突然1人の選手が鶴心を訪ねた。その選手とは、野洲高校出身の快足ミッドフィルダー、村田和哉選手だった。
「その頃はまだ長居やサポーターとの関わり方を模索していた時期でした。おかみと一緒にセレッソの練習も見に行ってみようと南津守の練習場へ足を運んだんです。それで、そのときの選手のファンサービスの丁寧さに感動してしまって、これはもう絶対に応援しないといけないと思いました。」
練習場では、自分がフードコートやらーめん店を開いていることを伝えた。
「それがですね。店の名前だけ伝えて場所を言うのをすっかり忘れてたんですね(笑)そしたら、その日の当日です。村田選手がソンギ選手と一緒に店に食べに来てくれて。聞けばわざわざiphoneで探して来てくれたと。こんな素晴らしい選手がいるんだなあと思いましたよ。」
その日を境にして鶴心あびこ店はセレッソを全力で応援していくことになる。セレッソがホームで勝った日は、半チャーハンのサービスや村田選手がゴールを決めたら半額など、サポーターと一緒に喜べる企画をつくっていった。
「全部が全部、私が考えたものじゃないんです。お店に来てくれたサポーターさんからもアイデアを頂きながら考えていきました。タオルマフラーやフラッグなどもお客さんから寄付して頂いたものがたくさんあります。やっぱりお店はお客さんがつくっていってくれるものだと思うんです。自分たちだけじゃ思いつかないことも生まれてきます。お店は後からついていくだけ。反対に私たちが楽しませてもらっているようなものです。」
村田選手がリーグ戦初得点を決めた翌日、お店では「村田祭り」が開催。その席には、練習の合間の短い時間を割いて来店してくれた村田選手本人の姿もあった。
100年先もフットボールと美味しい食べ物を。
「夢は“うちのおじいちゃんも通ってた店や”と言われるようになることですね。ヨーロッパには100年以上も続く店があって、そこに何世代にも渡ってサポーターが集まっています。そんな店に鶴心もなりたい。だからちゃんと後継者も育てていかないといけませんよね。」
数年後の目標として、長居の駅前にサポーターが気軽に集まれるスポーツ居酒屋的なお店も出したいとのこと。ランチもあって夜にはお酒も飲める店で、勝利の宴を開ける店にしたいと計画している。
「なんと言ってもサポーターの方が試合に勝って、笑顔でスタジアムからでてくるのを見るのが一番嬉しいんです。サポーター1人ひとりに、それぞれの役割があると思っていて、私の場合はお店で美味しい料理を食べてもらって、チームの勝利や歴史に残る試合の思い出を心おきなく語り合える場を提供することだと思っています。働きながらセレッソの話ができるなんて、それほど幸せなことはないですから。試合のある日の営業はそりゃ楽しみで、ゲームが終わるとフードコートからダッシュであびこの店に戻ってます(笑)」
ホームゲームの当日、山本さんは朝7時から仕込みをする。19時キックオフならフードコートの準備に12時にはスタジアム入りする忙しさ。つくり置きのからあげは出さないと決めているからだ。その場で揚げた一番美味しいからあげを食べて欲しいという一心で手間をかけている。もちろんゲームの行方を知ることはできない。
「でもね、サポーターのみなさんの歓声が教えてくれます。今、点が入ったなとか、ちょっと押されているのかなとか。試合が観れなくても、その後、お店でサポーターさんから試合の話が聞けるから楽しみなんです。」
山本さんにセレッソ大阪とは?と尋ねるとこう答えが返ってきた。
「365日、人生の中にある貴いもの。その絆を絶対になくしていけない。」
※ 2013.01.14 取材:文・編集 東善仁(weather)
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